磯部建設株式会社(栃木県)
受賞のための取り組み
職員のスキルアップと検査内容の水平展開
好成績・好業績の秘訣シリーズ第10回は、前回に引き続き、磯部建設株式会社の福田常務に、 工事の受注と表彰受賞のための会社の取り組みについて伺った。
実績のため赤字覚悟で職員を2名配置
─── ここには表彰状がたくさん並んでいますけれど、以前と比べて変化はありますか?
福田常務
受賞する現場は確実に増えています。
理由としては、総合評価落札方式による受注をするために、企業の施工能力、配置予定技術者の能力、
企業の信頼性・社会性の評価点のアップを図り、高い技術評価点を取らないと受注ができない。
それには表彰工事を取らなければという意識が職員に芽生えてきたことがおおきな要因だと思います。
また、受注した工事において、表彰がいただけそうな現場においては、
着手前に現場代理人と表彰を目標に頑張るようにしています。
─── 最近のものをみると局長級の表彰が続いているようにみえますが。
福田常務
おかげ様で国交省工事では、H22年、H23年には連続で優良工事、H24年には一般土木部門での安全表彰を受賞しました。
毎年1件は受賞できるようにしたいと思っていますが・・・。
6年前は国交省の一般土木Bランクの位置のため、3億以上の物件でないと入札に参加できませんでした。
県内においてそうそうBランク物件はなく受注が厳しい状況でした。
その間に国交省の入札制度が大きく変わりBランクからCランクに下がり入札に参加できるようになっても、
総合評価落札方式となり工事成績、優良工事表彰、難工事の実績、優秀技術者表彰等の評価項目が設定され
項目ごとに評価点があり、技術評価点の高い業者でないと応札額にもよりますが落札できないのが実情でした。
Bランクの2年間が大きく他社に後れを取ってしまいました。
だからその当時は、22~23件応札して取れたのは1~2件くらいしかなかった。
先代の社長とも話したけど、こんな状態じゃ国交省の仕事は取れない。
人がやらないような価格で、多少赤字になってもそういう物件を1件か2件取って、
表彰をもらえるような工事しないと会社の実績になってこないし、社員の実績にもならず応札に参加できない。
それで5~6千万の工事でも、国交省の工事を受注した場合は、
多少の赤字覚悟でも2名の職員を配置することに決めました。受注した物件はすべて2名ずつ配置してきました。
約3年間は受注するのにも苦労しました。
─── 敢えてそうされているわけですね。
福田常務
利益を確保しなければなりませんが、そういうやり方をしないと、
いざ物件を取りたいと思っても会社・個人の実績がなければ入札に参加できません。
おかげ様で今年度においては、経験を積ませた職員、会社の実績もあるので受注に結び付いています。
今後は、安全管理を徹底し、無事故でいい仕事をやって表彰をもらって評定点を上げるということに
尽きるのではないかなと思います。
目標は、他社より有利に受注ができるように技術評価点のアップを図ることだと思います。
検査での指摘事項を社内検査で水平展開
─── 他には何か打っている手はありますか?
福田常務
以前、ワイズさんにH22年11月、H23年2月の2回にわたり 「工事成績評点対策講習会 年間平均80点を超えるために」をお願いしたことがあります。 その中で工事成績評点アップのために評価項目と評価基準を理解し、職員が自分の現場において 着手前、施工中、検査前に成績評点のシミュレーションをすることにより点数をアップするためには 何をすればよいのか大変勉強になりました。
─── まるでお願いしたかの様なお答え、ありがとうございました(笑)。
社内でのセミナー開催がお役にたてているのですね?
福田常務
立ちましたよ。おかげで栃木県発注の工事においては、土木・道路・法面課の評点が2~3点アップしています。
平均80点にはなりませんが今年度に限っては部門目標の78点を達成可能だと思います。
また引き渡し検査前には、現場・書類の社内検査をしっかりやるようにしていることが、点数アップに繋がっていると思います。
─── 担当のチェックをされる方はいらっしゃるのですか?
福田常務
特別な社内検査員、担当者はいません。
各発注者の工事で引き渡し検査が終わった職員が社内検査をするようにしています。
そうすれば検査書類についても検査監の質問内容もある程度確認でき、
だいたいどういう内容で検査されたかがわかるでしょう。
検査時の指摘・アドバイス事項を社内検査で水平展開をするようにしています。
─── みなさんで手分けしてチェックしている、お互いチェックしているわけですね。
福田常務
お互いに職員が検査監の立場で、確認・チェックを行うことにより、 書類の整理方法とか、作成方法について職員間でお互いに刺激になりコミュニケーションが取れ、 「検査後あの書類を作成しておいてよかった」と感謝している場面も職員間で見うけられます。 以前は、同じ検査監が検査をしたときに同じ指摘をされてしまい、 「この前の検査の時に言ったのに、おたくの会社は水平展開されてないの?」 なんて言われるケースがありました。
─── それは減りましたか?
福田常務
はい、減りました。最近では耳にしないですね。 わが社の土木工事部門は2年前までは、土木部、道路部、特殊土木部の3部門があり、 各部長がいて部門別すべて管理を行っていました。 現在は、3部門を統一し、土木本部として土木課・道路課・法面課として管理するように 組織の変更をしたことも要因と思います。
─── 発注側からすれば同じ磯部建設さんにみえますからね。
福田常務
そのとおりで、検査に立ち会っても恥ずかしい思いをしました。
表彰受賞者には報奨金
─── 表彰を頂いた場合にご褒美とかはあるのですか?
福田常務
あります。会社から金一封の報奨金が出ます。 昔は特別休暇をもらって、海外旅行、国内旅行がありましたけれど、 現在は報奨金を出すようにしています。
─── ちなみにおいくらですか。
福田常務
局長表彰・事務所長表彰・県知事表彰・市長表彰工事が対象となっています。 発注者によって金額の差がありますが局長表彰だと25万。 対象者は受賞した現場代理人、監理技術者です。 表彰はお金で買うことはできません、表彰をもらうことで受注に有利になることを考慮すれば、 もっと出してもよいと思いますけどね。 そうすれば我も我もと社員の気合も入ってくるのではないかと思います。 ただそうは言っても会社だからね。あまり一部に偏ってもいけないし。
─── そうですね一人の力で取るわけではないですからね。
旅行とお金は実際どちらの方がみなさんに喜ばれますか?
福田常務
昔はやっぱり海外がいいとか香港だとか北海道なんてなかなか行けなかったからいいかなと思ったけど、 今考えると個人的にはお金の方がいいかな。 自分だけ楽しむよりは家族も喜ぶのではないかと思います。 家族の協力・犠牲もあって取れるわけですから。 自分だけ楽しんで私たち家族には何もないのって言われるくらいだったら、 家族サービス等に有効に使っていただけたらと思います。
講習などの出席率のいい職員は工事成績も良い
─── 勉強に力を入れられていると思うんですけれど、
特別に月に1回とか半月に1回やっていることはあるんですか?
福田常務
特にこれといった勉強はしていませんが、国交省、栃木県の総合評価落札方式において
配置予定技術者の継続教育(CPD)の取得が加点されるため職員の教育に力を入れています。
国交省の場合は応札時期に20ユニット(20時間)、栃木県の場合は10ユニット(10時間)以上が対象となります。
無料の講習もありますが、講習費用とユニット不足となりそうな職員を
講習に参加させる調整にけっこう苦労しています。
職員のレベルアップに繋がる継続教育(CPD)を、社内で安く講習して頂けるものがあれば、
年に2回~3回ぐらい実施できたらと思います。ワイズさんで何か参考勉強になる講習でもあればご紹介願います。
H22年6月~H23年5月までの1年間でワイズさんの講習を含め9件の外部からの講習を行いました。
講習の成果についてH23年3月~H24年4月までの1年間の工事成績で結果を分析してみましたら
出席した職員と欠席している職員のレベル・認識の差が如実に出てきました。
以前から部会議等の出席率高い職員は、工事評定点も高く結果が伴ってきていますが、
出席率の悪い職員すべてではありませんが全体的に結果も良くないのが事実でした。
企業は人なり、今後は、人材の育成と確保を継続して行わなければ存続しません。
今後は、全員参加のレベルアップ教育を継続的に行い、顧客との信頼関係を築き、
顧客の要求を満足できるよう技術と品質の確保に努めるように努力していきたいと思っています。
─── 今回は貴重なお話しをありがとうございました。
取材後記
2回に渡り、磯部建設(株)福田常務にインタビューさせて頂きました。
好成績をとる職員の特徴や、表彰受賞のために会社で取り組んでいる内容を具体的にお話しいただきました。
次号では、同社の小原部長に現場の安全対策についてお話し頂きます。どうぞ、お楽しみに。
(取材・まとめ ワイズ)
磯部建設株式会社 (いそべけんせつ) 栃木県日光市に本社を置く総合建設会社。昭和25年創立の栃木県内大手企業のひとつ。 栃木県日光市今市1525番地 |