地域で活躍する会社から学ぶ -好成績・好業績の秘訣- 第2回

一若建設株式会社(愛媛県)

一若建設株式会社(愛媛県)須田副部長

技術はあって当たり前
地元対策が一番大事

先月からスタートした、工事成績で高評点を獲得している優良建設企業へのインタビュー。

前回に続き、愛媛県宇和島市に本社を置き、林野庁長官賞を受賞するなどした地域の優良企業である一若建設株式会社で、平成9年より国土交通省大洲国道事務所工事の担当者を務め、平成19年度琴ノ川改良工事で大洲国道事務所表彰を受賞された須田健司土木部副部長に、好成績をとるための秘訣についてインタビューを行った。

地元関係への配慮が一番

─── 地元対策が一番とのことですが、具体的なお話をお聞かせ下さい。

須田副部長

どこの県の工事でも一緒でしょうが、地元関係への配慮が一番かなと思います。そのためには監督職員とよく相談するということが大事ですね。監督職員に対しては「地元の方々はこのように話していますがどうしましょうか?」「(緊急を要したときには)こうしました」という報告を必ずすることが大事ということです。

例えば、今まで通っていた道が無くなる際に、図面には単にこの様に切り替えと描いてあるけれども、「それじゃ不便でしょう?」と考えて便利なように変更したり、排水関係も図面に描いてある通りだと水が流れないなど色々なことがあります。

図面だけではなく、施工前の丁張りをかけた時点で地元の方に見てもらうことも大事です。丁張りをかけないと、図面だけでは地元の方・素人の方はわからないですからね。丁張りをかけた時点で「こんな感じになりますがいいですかね?」と了解をもらい、それから施工に入るということですかね。

出来た物とイメージとはやっぱりちがいますからね。「ここはこうなるんじゃなかったの?」というものも中にはあります。丁張りも図面もなしで説明するのとでは全然違うと私は思いますが、それでも実際には後から「こんなはずじゃなかった」という人が出てきます。その場合は、それはもう説明したでしょう、と納得してもらうか、どうしても納得してもらえない場合は、補修します。ある程度は現場に任せてもらっているので、小額のことは会社へ事後報告なのですが、それによって後で金額が上がるときには会社に相談してからということになります。

評定点表 まあだいたい「やりますよー」と言ったことは、金額が少々かさんでも、もうそれはやらなければならないでしょうということで処理はしてもらいます。全て聞くわけにはいかないですが、世の中の常識の範囲で対応するようにしています。設計書に数字的にあがっていない工事に対しても、関連の準備工というのか仮設工というのか、そのような解釈をしています。まあたまに常識外れのことを要求される方がおられるので、それに対しては断固としてお断りしています。

ただ、断るにもトラブルがあったらいけませんので、発注者に「こういう要求をされていますが我が社としてはもう対応できませんので断ります」と伝えておきます。「トラブルが発生するかもしれませんが断りますよ」と実際に発注者の方に相談すると、まあ大抵いいですよと言っていただけますよ。

場合によっては業者が断ると発注者に連絡される場合がありますが、いきなり連絡がいくと誤解が生ずると思いますので、「うちが断れば発注者に対してまた同じ要望があるかもわかりませんよ」と伝えておきます。要望というか苦情というのかわかりませんが、いきなり発注者の方の耳に入るのと先に事情がわかっていたのとでは、話の聞こえ方やその後の対応が全然ちがいますね。

地権者への説明も監督職員と一緒に何度か行いました。地権者は昼間仕事なので、夜、監督員と二人で行ったことも何回もありました。

今回の表彰はその辺も評価していただいたのではないかなと思います。あとボックスにクラックがなかったということですね。

やはり直営施工に頼る部分が大きい

─── 表彰工事の中で直営施工された部分とその理由を教えて下さい。

須田副部長

排水構造物は当然直営でやったのですが、ボックスカルバートと土工については下請けに出しました。準備工、後片付けはそうですけれども、重要構造物のコンクリート打設も直営でやっていますね。型枠は下請けに出しますけどね。

重要構造物のコンクリート打設を直営施工するのは、思った管理ができるというか、管理がしやすいからです。下請けさんも当然やることはやってくれますけど、うちの作業員は慣れているといいますか、打設の技術があると思っていますからね。

例えば、打設でのバイブレータのかけ方だとか、ポンプの使い方だとかいろいろありますが、一番は施工計画書で書いたとおりのことをやっているかですよね。下層にバイブ先端の深さが50cm迄入っているかどうか、配管の高さが最初はここだからこの高さだとか、入った時の最初の高さをスプレーしておいて、あとは現場の感覚でわかりますね。

コンクリートを打つ度に出来上がりをイメージするじゃないですか。けれど実際に型枠を外したら、イメージ通りに出来ているのがあったり、イメージと違うものが出来ていたりします。打設では毎回同じように「下層に50cm突っ込みなさい」、「挿入の幅は50cmを保ちなさい」と言ってやっているのですが、毎回違うものが出来ているのが現状です。

クラックをゼロにするために

─── 打設において気遣われた点について教えて下さい。

須田副部長

今回はクラックが一切入らなかったのです。壁厚1メーターのスラブ厚80cmですからね。全部で1,600m3でクラックは全然なかったのです。その辺を評価していただいたということはあると思います。

また、時期がカンカン照りではなくて、11月くらいだったかな。割と後半でしたので気候は良かった。乾燥収縮に関してはそんなに気を遣わなくてよかったのです。

しかしクラック防止の補助対策等もある程度やりました。今回は打設前にCRネットというガラス繊維ネットを入れたのと、クラックセーバーという打設後の塗布剤を使いました。この塗布剤は初期の蒸発、水分蒸発を抑制します。

昨年度も床版工事をやったのですが、床版でも当初9日間は養生マットで散水養生をして、散水養生が終わった後でクラックセーバーを打ったのです。そのときもクラックは無かったですね。

ただ必ず0かといったら0じゃない。普通はなかなか0にはならない。結果が分からないのです。同じものを2つ造って、対策をしたものと全然しないものとを比べるわけではないので。効果がどれだけあったかと言われれば、まあ過去の事例から見ればかなりあるのではないかなと思います。

クラックをいかに抑制するかということにはかなり気を遣っていますが、それがヘアクラックまでといったら中々難しい。大学の先生もそれは無理という認識を持たれている。発注者の方も大学の先生といろいろ付き合いはあるはずですから、その辺をもう少し考慮していただいて、実際の施工にどこまで要求すべきか、現実的に今の技術レベルならここまでは要求してもいいのではないかなど、今よりももう少し基準を明確にしてほしいというのはありますね。検査する方によって個人的な私見でこれはだめというのではなくて、一定の基準があってそれ以上出来れば素晴らしいというようになれば良いと思っています。

(取材・まとめ ワイズ)

一若建設株式会社

一若建設株式会社

(いちわかけんせつ)

愛媛県宇和島市に本社を置く総合建設会社。一般土木工事から港湾工事、トンネル工事まで直営施工を行う。

愛媛県宇和島市和霊町1250
代表者:中畑 健右