一若建設株式会社(愛媛県)
好成績をとるために必要なのは
「知識、経験、やる気」
直営施工により下請任せでない経験を積むことが重要
今月より「地域で活躍する会社から学ぶ -好成績・好業績の秘訣-」を開始し、工事成績で高評点を獲得している優良建設企業や独特の経営スタイルで好業績をあげている担当者や管理者、経営者の考え方や管理方法などをお伝えする。
第1回目は愛媛県宇和島市に本社を置き、林野庁長官賞を受賞するなど地域の優良企業である一若建設株式会社で技術系トップを務める中橋成信常務に好成績をとるための秘訣を伺った。
直営施工へのこだわり
─── トンネル工事まで直営で施工されるという事ですが?
中橋常務
当社は、当地域で創業以来50数年、一般土木工事だけでなく、トンネル・橋梁・下水道・河川・港湾・漁港・海岸工事などの公共土木工事を、多岐にわたって元請施工をしています。特にトンネル工事は一般的に専門工事会社に外注することが多いと思いますが、当社は1,000m以上のトンネル工事において掘削工・覆工で直営施工をした実績があります。
直営施工の場合、詳細な施工管理の知識が必要で、若年技術者は工事を通じて体験し習得することができ、直営施工現場に限らず下請体制の現場管理にも役立ちます。言い換えれば、自らが汗をかかず他人や下請会社に任せきりの現場を何度経験しても技術力のアップには繋がりません。教科書にはない施工管理のポイントを現場経験より習得していくことが大切だということです。
教育へのこだわり
─── 会社としての考え方や社員教育について教えて下さい。
中橋常務
当社の基本理念は、「人と自然にやさしい」をモットーにして「地域の発展に貢献すると共に社力を挙げて顧客の安心を得る」ことですが、基本的には「安全第一」です。安全は、全てに対して優先します。工事の大小に関らず危険予知活動など「あたりまえのこと」を省略せずに確実に実行することです。安全第一の理念で、社員にも現場周辺の方々にも配慮をしながら仕事をし、さらに環境面でも地元の方々にご迷惑を掛けないように施工しないと駄目ですよということです。
社内講習会については、順番に社内講師を任命して3~4ヶ月に1回程度の頻度で開催しています。社内的に受注機会の少ない工事(工法)などについて、すべての技術職員に基本事項を説明しています。また、工事仕様書や法律の改正の説明なども、その都度理解していないと施工管理をする者にとっては、知らないでは済まされないことなので実施しています。
最近では、足場基準の改正についての説明やコンクリートのひび割れ対策の講習を実施しました。任命された講師は、受講者以上に講習内容の理解が必要で、順番に任命することで全社員が真剣に講習に参加するようになり講師も受講者も理解度を向上させることができます。
コンクリートのひび割れ対策の様に工事成績にかなり影響する重要な講習は、生コン会社の試験室の方やセメントメーカーの方に外部講師をお願いすることもあります。
好成績をあげるために
─── どの様にすれば好成績をとることが出来るのか教えて下さい。
中橋常務
簡単に言えば「知識と経験とやる気」です。知らないと何もできないし、学問だけでも良い仕事は出来ません。下請体制の現場経験でも技術力アップに役立ちますが、先ほどお話しした通り一人で適切な判断ができる一人前の技術者になるためには、直営施工現場を経験させることが早道だと思います。いずれにしても、自らが積極的に施工の計画・決定・実施・管理に携わらなければ、いつまでたっても一人前には、なれません。要するに「やる気」が必要だということです。
若い技術者を育てる場合、あまり焦ってはいけません。まず、優秀な指導者の下で現場経験をさせることです。知識は、指導者のほんの少しの助言程度で自然に習得していきます。現場に関連した内容は教科書で勉強するよりはるかに早く理解していくものです。最低限の基本知識の習得と現場経験をさせたら、規模の小さな現場でもいいからなるべく早く一人で現場を担当させることです。
もちろん、時々上司のチェックは必要です。問題なく工事を完成させることができれば、更にレベルの高い現場を担当させます。この繰り返しで、今までの経験や知識を活用して問題を解決する応用力を自然に習得することができます。
ただしこの進歩も本人の「やる気」が無くなった途端に止まります。やはり最後は本人の「やる気」が重要だということです。
施工計画について
─── 施工計画時に何か特別な対応をされていますか?
中橋常務
特別な事は何もありませんが、当社では第一に設計図書や事前の打ち合わせで明らかになった発注者の要望事項が盛り込まれた施工計画書を作成することにしています。
第二に「安全第一で品質が良い工事方針」であれば、現場担当者にすべての権限を与えています。言い方が悪いかもしれませんが、社長のような感覚で担当者が好きなようにすれば良いのです。
自分の決めたことを思い通りにはできますが、結果が良いにしろ悪いにしろ全て「自分の責任」ということですね。上手くいけば達成感や満足感を得ることができますが、失敗すると問題ですね。大切なのは失敗を単なる失敗として終わらせないことであり、次の仕事に繋げることができるかどうかが重要なのです。
第三に、作成した計画書はそれを忠実に実行することです。たくさん良いことを書くことは簡単ですが、それをいかに忠実に守って実行するかが重要なのです。「今回の施工計画はまずかったかな」と思ったら、後からでも早めに変更を検討すべきです。
最後になりますが、技術者のレベルも様々ですから最終的に施工計画書の完成品を提出する前には必ず上司が確認をするようにしています。「少しでも良い施工計画書をつくるぞ」という「本人のやる気」無くして決して良い計画書を作成することはできませんので「やる気」をださせる環境をつくることが最も重要だと感じております。
(取材・まとめ ワイズ)
一若建設株式会社 (いちわかけんせつ) 愛媛県宇和島市に本社を置く総合建設会社。一般土木工事から港湾工事、トンネル工事まで直営施工を行う。 愛媛県宇和島市和霊町1250 |
取材後記
今回、弊社としては初の試みとして好成績をあげ続ける地域の優良企業へのインタビューを行わせて頂きました。
最初は「各社のノウハウはなかなかお話し頂けないのではないか」と心配しておりましたが、第1号として一若建設の作道副社長にお願いしたところ快く受け入れて下さいました。
今回のインタビューでは、終始、副社長・常務をはじめとして社員の皆さんが「うちの施工品質には自信がある」と明言されていたのが印象的で、会社全体の考え方や行動指針がとてもしっかりしていると感じました。
第2・3回目は国交省・林野庁で受賞歴のある同社の土木部技術者お2人へのインタビューです。表彰現場での具体的な取り組みについてお話し頂いていますのでどうぞお楽しみに。