2017年7月25日 国交省は中央建設業審議会総会を開催し、経営事項審査改正と建設工事請負契約約款の改正について審議した。
審議会の冒頭、国交省土地・建設産業局 田村 計 局長は、「先日、新国立競技場の建設工事で、技術者が自ら命を絶つといった事案が発生した。今後も強い決意をもって働き方改革を推進していかなければならない。建設産業政策会議のとりまとめをもとに、経審改正・建設工事請負契約約款の改正について、忌憚のないご意見を賜りたい。」と挨拶した。
議事は、7月4日に石井国土交通大臣に報告された建設産業政策会議とりまとめ文書「建設産業政策2017+10」における施策等について国交省より報告された後、建設産業政策会議において議論された経審の改正案について審議が行われた。
改正案は、社会性評点Wの評価項目について以下3点の見直しを行うもので、審議の後、全会一致で承認された。
(1)W点のボトム撤廃。
(2)防災活動への貢献状況(W3)の加点幅を拡大。
(3)建設機械保有状況(W7)の加点方法の見直し。
(1)W点のボトム撤廃
現行経審において、社会保険等未加入業者や、民事再生法等適用業者、法令違反業者にはW評点で減点措置がなされるが、「合計点が0に満たない場合は0とみなす。」とされる。
改正案は社会保険未加入業者や法律違反に対する減点措置を厳格化するため、下限(0点)を撤廃することで社会保険等へのより一層の加入促進を図るほか、不正が行われない環境を整備する。
改正により、W点の最低点は現行の0点から-1995点となる。
国交省によると、W点のボトム撤廃による影響は、14万社中約950社(ほとんどが社会保険未加入企業)にP点換算で平均△56点の影響が生じ、改正により最頻値も400点台から300点台へ下方スライドする。
(2)防災活動への貢献状況(W3)の加点幅を拡大
国や地方公共団体と防災協定を締結する建設業者は、災害時の24時間対応など自らの負担も伴いながら防災活動を行い、社会貢献を果たしている。
こうした企業の「地域の守り手」としての役割を評価し、将来にわたり後押しするため、防災協定締結業者への加点措置を現行の15点から20点に拡大する。
(3)建設機械保有状況(W7)の加点方法の見直し
地域防災への備えの観点から、H22年10月の経審改正において、災害時に使用される代表的な機械に対する加点が評価され、H27年4月の改正において、評価対象機械を一部拡大している。
一方、企業によっては機械を購入することで、経営状況分析点(Y)が低下し結果として総合評点(P)が下がるなど、機械保有へのインセンティブにつながっていないケースもある。
こうしたことを鑑み、少ない台数でも建設機械を保有することで経審においても加点評価がなされるよう、建設機械保有の評点テーブルの見直しを行う。
現行:1台=1点(上限:15点)
改正:1台=5点 2台=6点 ・・・・・7台=11点 8・9台=12点 10・11台=13点 12・13台=14点 14・15台=15点(上限15点)
※現行制度で評価対象外とされる、営業用ダンプトラックについても主に建設業の用途で使用するものについては評価対象とされる。
国交省によると、改正前の平均点は696点だったところ、今回のW3・W7の改正により703点に上昇(+7点)。
P点の分布についてはやや上方スライドする(ボトム撤廃による影響は、対象業者数が占める割合を鑑み考慮していない)。
改正案について、委員からは次のような意見が寄せられた。
「地域の守り手としての活動を、防災協定締結企業の加点拡充や建設機械保有の評価方法を見直しで後押しすることは評価したい。保有形態として、子会社等の所有としている企業も多く、グループ経審的な方法で評価することができないか検討してほしい。」
「専門工事業者評価制度は、建設産業政策会議でも施策として取り上げられた。専門工事業者は経審を受けない性質上、社会的な立場がはっきりしない。工事を下で支えている専門工事業者の評価制度を早期に導入してほしい。」
改正案は参加委員の全会一致で承認され、今後改正に向けた手続きが進められる。