2017年5月29日 国交省は「第5回 建設産業政策会議」を開催した。
近年の建設業界を取り巻く状況を受け止め、10年後においても「生産性」を高めながら「現場力」を維持できるよう、建設業関連制度の基本的な枠組みについての検討が昨年10月より行われている。
第5回建設産業政策会議では、これまで検討が重ねられてきた各ワーキンググループ(以下WG)のとりまとめ(骨子案)の他、建設企業の海外展開・適正な施工確保のための技術者制度検討会のとりまとめについて議論された。
今回は、「法制度・許可WGのとりまとめ(骨子案)」「企業評価WGのとりまとめ(骨子案)」「地域建設業WGのとりまとめ(骨子案)」の3回に分け掲載する。
■法制度・許可WGのとりまとめ(骨子案)■
法制度・許可WGでは、請負契約、受発注者間の規律、許認可制度、建設就業者関連制度について検討された。
「建設工事の適正な施工の確保」「発注者の保護」といった建設業法の本質的な目的や、働き方改革を踏まえての環境整備、適正な工期や法定福利費の支払いなどの制度設計、個人発注者の保護のあり方等の視点に着目して議論が実施された。
①請負契約や受発注間の規律
(1)請負契約とその規律
働き方改革の取り組みの推進において、適正な工期設定の重要性が増している。
「適正な工期」の考え方を明らかにしたうえで、工期ダンピングを禁止すること、請負代金に法定福利費相当額が含まれていなければ適正といえないことを明確にすることなど、受注者の責務が検討された。
その他、発注者の責務・契約における受発注者の責務の明確化、注文者による適切な対応の促し、下請間の規律について検討すべき方向が提示された。
(2)工事の実施に関連して受発注者が締結する請負契約以外の契約に対する規律
建設生産物の品質を確保するためには、請負契約のみならず、請負契約以外についても適正な施工を確保する上で必要な規律について検討する。
・CM委託契約の位置づけについて、契約の相手方に関する公的な制度が存在せず、CM方式の普及は進んでいない。
CM方式は発注者の能力を補完し、適正な施工を実現する上で普及が望まれるため、具体的な制度について検討されるべきとされた。
・工場製品化について、生産性向上のため工場製品化が今後更に進展することを見据え、問題があった場合は製造者に対する報告徴収や立ち入り検査などを盛り込む方向で検討すべきとされた。
②許認可制度について
建設企業に過剰感があったこれまでとは異なり、中長期的には建設業の供給力が不足し、インフラの維持管理に支障を来す事態も懸念されることから、建設工事従事者の労働福祉を確保する観点や、地域の守り手としての役割が期待できる建設企業を確保する観点を踏まえ、許可制度全般について検討された。
個別の許可要件に対する課題のうち、今後検討すべき点があるものとして以下が示された。
(1)経営業務管理責任者要件
小規模会社や製造業等を兼業している会社において、経営業務管理責任者の経験年数の要件を満たすことが困難であることや、経営業務管理責任者の職務内容について、建設業法の規定が置かれていないことから、経験年数の見直しを行う一方で、経営のガバナンスの観点からその役割や責任を明確化することが検討課題として示された。
(2)営業所専任技術者要件
営業所主任技術者について、原則として営業所に常勤して職務に従事することが求められているが、技術者の確保状況やICTの利用環境の向上を視野に入れ、現場技術者と兼務できる範囲のあり方について検討を進める。
(3)労働者福祉の観点の検討
これまでも許可行政庁により社会保険の加入状況の確認・指導がなされているところであるが、社会保険の加入など労働者福祉への取組み状況を許可要件・条件とすることについて、建設業法の趣旨や経営事項審査等との役割分担も鑑み検討を進める。
その他、現在未許可業者でも施工可能な500万円未満の軽微な工事のみ行う者への対応については、適用される規定の拡充・技術者配置要件・届出制度または登録制度の創設などについて検討が進められる。
また、申請書類等の簡素化については、一部の確認書類・添付書類の用意が申請者・審査行政庁双方の負担となっている指摘もあり、電子申請への変更と申請書類の簡素化について、虚偽申請への対応のあり方と併せて検討すべきとされた。
③建設就業者関連制度
建設従事者の中で約330万人を占める技能労働者について、建設業法上の位置づけがなく、「技能」「技術労働者」の制度上の位置づけ、技能労働者の育成についての建設業者の責務について検討すべきとされた。
また、建設企業間における人材の効率的な活用など、労働の平準化のための対策についても検討を深めるべきとされた。
今後の進め方として、建設業を取り巻く状況の変化・関係者の合意形成・制度改正への対応に要する時間等を考慮し、制度改正等の手段として、具体的にどのような手段で施策を実現するか検討が必要とされた。
その2:企業評価WGのとりまとめ(骨子案)はこちら
その3:地域建設業WGのとりまとめ(骨子案)はこちら