2017/02/09 国土交通省 「建設産業政策会議 法制度・許可ワーキンググループ」が初会合。建設業法改正や受発注者の規律についても議論。

国土交通省は2月8日、「第1回 建設産業政策会議 法制度・許可ワーキンググループ」を開催した。

「建設産業政策会議」は10年後の建設産業を見据え、建設業関連制度の基本的枠組みについて検討を行い今年6月をめどに取りまとめを行う。
「建設産業政策会議」では「法制度・許可ワーキンググループ」、「企業評価ワーキンググループ」、「地域建設業ワーキンググループ」の3つのWGを立ち上げ、今回は第1回の「法制度・許可ワーキンググループ」が開催された。

「法制度・許可ワーキンググループ」では、以下について議論がされる。
1.建設業法等における定義
2.建設業法の構成、変遷等
3.建設産業の態様とプレーヤー
4.請負契約とその規律
5.許認可制度 (次回以降で議論)
6.技能労働者の位置付け (次回以降で議論)

残り2つの「企業評価ワーキンググループ」、「地域建設業ワーキンググループ」も今後開催される。

冒頭、谷脇土地・建設産業局長より、「建設業の法制度は時代に応じて変遷してきたが、現在は人材確保や技術の進展等、建設産業が変化してきており、法制度等の基本的な枠組みについて、これまでの意見も踏まえて議論をいただきたい。土木・建築、公共・民間の業態の違いにどう対応するか、請負契約の範囲、契約の締結の在り方などについても議論をいただきたい。」と挨拶があった。

谷脇土地・建設産業局長

<建設業法における定義>
建設業法での「工事」「請負」「建設業者」「技能労働者」等の定義が報告され、参加された委員から意見が出された。

・建設業法での「請負契約」は「工事の完成」を目的としているが、例えばとび土工での仮設のみの場合は完成と言えるのか、なんでも完成とすると難しい。
ECI、CMも請負ではない、請負ではとらえられない実態が多い。請負でなく、工事を実施する契約等か、「完成」とすると実態からずれる。
・民法での請負と建設業法での請負契約でずれがある。実態を踏まえた上で、適切な契約が必要。
・技能労働者の位置づけについては、西欧と日本で技能労働者の考え方が違う。西欧はただ実行するだけ、目の前の仕事を行うだけだが、日本では自分で考えて行う。

<建設業法の構成、変遷等>
建設業法は時代にあわせて変遷されてきた。
・昭和24年 建設業法制定時には、戦後の業者乱立や経営・資金難、請負契約の不合理への対応。
・昭和46年 重要な産業に成長したが、問題のある業者が増加したことへの対応。
・昭和62年 競争が激化し、問題のある業者が増加したことへの対応。
・平成6年 不祥事への対応から経審が義務付けられる。
・平成12年 不正行為の発生によりの入契法が改正。
・平成26年 担い手不足等の問題から三法の改正。

現行の建設業法は「この法律は、建設業を営む者の資質の向上、建設工事の請負契約の適正化等を図ることによって、建設工事の適正な施工を確保し、発注者を保護するとともに、建設業の健全な発達を促進し、もって公共の福祉の増進に寄与することを目的する」とされている。

建設業法については、これから主に以下の視点からの検討がされる。

●全体的な考え方
・労働力人口が減少し、担い手確保が建設業の重要課題となる中で、建設業従事者の働き方を意識した制度設計
・生産性の向上を意識した制度設計
・建設業への参入の状況が変化し、地域によっては建設業の供給力が不足する場合は生じうることへの対応
・請負契約に限られない契約形態の規律
・消費者(エンドユーザー)への保護を意識した制度設計
・一定の競争性は確保しつつも競争に付すべきでない要因を加味した制度設計
●業種や業態の違い
・土木と建築の違いなど業態の違いに応じたきめの細かなルール設定
・民間工事における規律
●契約の履行や施工の適正性の確保
・高度で複雑な工事や外注比率の高い工事がある一方で、単なる組立作業となる工事もあるなど建設工事の多様化への対応
・建設工事におけるICT化の進展に対応した施工管理
・フロントローディング、BIM、CIMなどが広がる中、発注者、設計者、施工者の責任関係
・施工に関する事業者の責任と技術者の責任
・技能労働者のキャリアパスも意識した制度的な位置付け
・建設業者のコンプライアンスの取り組みの推進
●発注者の位置付け
・発注者の能力差、多様性への対応
・体制の弱い発注者への対応
・担い手の確保や働き方、下請取引の適正化などの政策的要請について発注者にも果たしてもらうべき役割
・受発注者間の請負契約の適正化に向けて十分に機能する仕組み
・建築生産における発注者の役割を意識した制度設計
●規定の射程
・建設工事に関わる請負契約以外の契約形態(CMなど)の位置付け
・プレキャスト化など施工形態の変化(建設業者間にとどまらない、請負だけでは律しきれない取引の多様化)への対応
・発注者、受注者以外のプレーヤーの位置付け
・エンドユーザーの位置付け
・小規模な工事の実態を踏まえた対応

これについて参加された委員から意見が出された。
・建設業法は「建設工事を適切に施工」することが重要で、そのためには技術力が一番重要。
・建設業法では500万以下は許可の必要がないが、500万以下は工事は参入が容易、工夫の余地があるのではないか。

<建設産業の態様とプレーヤー>
建設工事の態様別の特徴として、「公共土木」「公共建築」「民間土木」「民間建築」の4区分について、それぞれの工作物の便益、発注者の特徴、法令への適合が報告され、参加された委員から意見が出された。

・「公共土木」「公共建築」「民間土木」についてはこれまでも議論がされてきた。「民間建築」、民民の契約について一番研究が必要となる。

<請負契約とその規律>
工事と民間工事における受発注者の規律の違いについて報告がされた。
今後、民間工事の規律についても議論が進められる。

公共工事と民間工事における受発注者の規律(赤字部分が公共・民間の違い)



規律にはどのようなものが考えられるかとして以下の例が出された。

          
・担い手確保や働き方にも配慮した適正な工期や請負代金額の設定、それを実現するための責務
・消費者保護の観点から、発注経験がほとんどない個人発注者等へ説明する責務
・生産性向上の観点から、発注者が用意する設計図書の密度や受注者からの問い合わせへの対応

参加された委員から以下のような意見が出された。
・消費者保護をどうやって取り組んでいくか。公共工事だけでなく民間工事についての建設業法での”適切な施工” ”品質確保”をどのように取り入れていくか。
・個人の発注者(民間住宅)と、事業者(会社)としての発注の考え方をどうするか。公共については規律があるが、民間については規律がない。
・民民について、エンドユーザーを意識した行政の介入が求められるのではないか。
・建設業法は業者のための法律、愛される建設業にするために消費者のニーズにどのように対応していくか。

また書類作成の負担が多いことが、技術力向上に反する、書類が多いことで現場に出ることができないことから書類作成を合理化できないかについて提議された。
次回以降に現状の書類作成について報告される。

「建設産業政策会議 法制度・許可ワーキンググループ」は、今年6月をめどに取りまとめがされる。


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