2016/12/22 「第2回 建設産業政策会議」が東京 霞が関の中央合同庁舎3号館にて開催された。
建設産業は将来の担い手不足等の課題があるが、働き方改革や、施工ではICT等の技術の進化等により今後の10年で大きく変化する。
「建設産業政策会議」は10年後においても建設産業が「生産性」を高めながら、「現場力」を維持していくために建設業関連制度の基本的枠組みについて検討を行い、来年6月をめどに取りまとめを行う。
来年1月からは取り上げられた課題について、請負・許可制度に関する「法制度・許可ワーキンググループ(仮称)」、経営事項審査に関する「企業評価ワーキンググループ(仮称)」、地域の建設業の入札契約等に関する「地域建設業ワーキンググループ(仮称)」に分けて来年より専門的な議論を進めていく。
冒頭、根本幸典 国土交通大臣政務官より、今回は10年後の建設業のあり方について委員から出された意見を踏まえて議論する、後半では事務局からの課題の案に対して議論をいただく。建設業が役割を果たすために安定的な予算確保と継続的な建設業関連制度の枠組みの構築を進めていく必要がある、と挨拶があった。
10年前と現在の建設業を比較して、維持工事の増加、営業利益の改善、就業者は1割減少、労働時間は改善していないが給与や社会保険加入は改善したこと、総合評価の導入やダンピング対策が進んだことについて報告がされた。
建設産業政策会議における検討課題(案)が取り上げられ、次回以降の会議やワーキンググループを設置して議論を深めていくことが示された。
経審や許可制度の見直しについても検討される。
また、2007年の建設産業政策の課題でも、地域の建設業が安定的に活動できるための環境整備や事業承継の問題等、引き続き対応が必要な課題も残っている。
参加された有識者より意見が出された。
・週休2日制は義務化しても現場で実行されるのか。時間が圧縮される、人件費が膨らむ等の問題点がある。
・働き方改革に加えて、処遇改善・給与水準の改善をしないといけない。給与水準を改善しないと若い人が入らない。入職しても半分が辞めている。
・企業規模別に建設業と製造業の賃金を比較すると、大企業では建設業のほうが賃金が高い。全体としてみると建設業の賃金が低いのは小規模企業が多いため。日本の建設産業の構造的な問題もある。
・一人親方も良い面もある。地域では頼りになる、大事にしないといけない。
・許可制度について、公共・民間、土木・建築、大企業・中小企業、大都市・地方などどう違うかということも踏まえて議論する。公共と民間は視点が違う。
・地方では維持管理、災害対応で建設業は大きな役割がある。除融雪に業者を確保するのに苦労している。地域の守り手として活躍しているが担い手確保の問題がある。行政の役割も重い。
・経営者の高齢化、事業承継の問題。
・外国人労働者について10年後の日本はどのような方向を目指すか。外国人を使うのか自国民を使うのか。
・海外進出についても議論する。
・中小企業は国の施策によって一喜一憂する。週休2日制や賃金の改善を実現してほしい。
■法制度・許可ワーキンググループ(仮称)における今後の議論のポイント
請負制度
・CMなど、請負以外の契約形態への広がりを踏まえ、これらを建設業法体系にどのように位置づけていくか。
・大手や中小の建設会社、公共・大手民間・個人の発注者など、多様な受発注者が存在するなか、受発注者間(特に民民間)の契約に対する法制度上の規律をどのように高めていくか。
・建設工事の専門化、高度化の進展により、一定の重層下請構造が存在するなか、品質確保等に関する元請責任のあり方をどのように考えるべきか。
・適正かつ円滑な施工を実現するため、設計と施工のあり方(設計の密度、設計への施工者の関わり)やそれに応じた請負契約のあり方をどのように考えるべきか。
許可制度
(許可制度の基本的な性格)
・現在の建設業法では、大手・中小、兼業・専業などにかかわらず一律の許可要件が課されているが、見直すべき点はないか(見直しに当たっての切り口として何が考えられるか)
(生産性向上)
・営業所に専任で配置する技術者要件についてICTの進展等を踏まえ、見直す点はないか。
・生産性向上の観点から、許可申請時に必要となる書類について、簡素化すべき点はないか。
(働き方)
・社会保険加入などの処遇改善の観点から、現行の許可要件について見直す点はないか。
(地域の建設業)
・地域の守り手として、地方建設企業が安定的に活躍し続ける上で、許可の面で見直すべき点はないか。
・建設企業が事業承継を行うための環境をどのように整備するか。
(その他)
・許可制度を見直す中で、経営業務管理責任者要件はどうあるべきか。
・建設関連業(CM等)について、制度上どのように位置づけるべきか。
■企業評価ワーキンググループ(仮称)における今後の議論のポイント
(基本的な性格)
・公共工事のランク分けの基礎資料という本来の制度趣旨がある一方で、総合評価落札方式の拡大や民間企業等における経審の活用等の実態も踏まえ、今後、経審の性格をどのように考えるか。
(生産性向上)
・生産性向上に取り組む企業を評価する観点から、現行の経審の加点項目について見直すべき点はないか。
・生産性向上の観点から、経審申請時に必要となる書類について、簡素化すべき点はないか。
(働き方)
・働き方改革に取り組む企業を評価する観点から、現行の経審の加点・減点項目について見直すべき点はないか。
(地域の建設業)
・大企業と中小企業、専業企業と兼業企業をそれぞれ適切に評価するには、どのような制度のあり方が考えられるか。
・地域における建設業の役割維持のため、現行の経審における地域貢献の評価について見直すべき点はないか。
(その他)
・経審も含め、公共・民間の発注者等にとって有益な企業評価情報を提供するには、どのような制度のあり方が考えられるか。
経審が民間でも利用されている状況についても報告がされた。
■地域建設業ワーキンググループ(仮称)における今後の議論のポイント
・地域の建設企業が、将来にわたって求められている役割とは何か
(例えば、地域インフラの整備、維持更新・保守点検、災害対応、PPP、CM、地方創生等)
・地域の建設会社の業態や地理的分布について、どのような姿が考えられるか。
(例えば、工事請負中心、維持管理系へのシフト、新規事業への進出)
・地域の建設会社が安定した受注を確保できるための方策として、どのようなものが考えられるか。
(例えば、複数企業・複数事業・複数年度により契約等を行いやすくするために、どのような方策があり得るか)
・その際、競争性や透明性との関係をどのように整理するか。
・地域の建設会社が包括的な維持管理を行うために、どのような方策が考えられるか。
(例えば、CM方式による発注者への支援等)
・建設企業が事業承継を行うための環境をどのように整備するか。
・地域における建設企業の役割維持のため、現行の経審における地域貢献の評価について見直すべき点はないか。
参加された有識者より意見が出された。
・国交省だけでなく他の省庁発注工事の実態も把握する。
・下請企業の評価。評価の仕方を検討してほしい。
・消費者のためにということを意識して進める。
・地方では工事規模が大規模になり下請けの重層化が進んでいる。下請間で契約がしっかりしてなくてトラブルになる。若い人が入りやすい業界に。許可制度だけでは限界がある。
今後、建設産業政策会議や各WGの開催により議論を深め、来年6月をめどに取りまとめを行う。