2016/09/01 国土交通省 「総合評価方式の活用・改善等による品質確保に関する懇談会(平成28年度 第1回)」
総合評価方式の改善、担い手確保等推進の取り組み、災害時等の発注方式等について議論

国土交通省 平成28年度 第1回の「総合評価方式の活用・改善等による品質確保に関する懇談会」が
中央合同庁舎3号館にて開催された。


最初に座長を務める小澤一雅氏(東京大学大学院工学系研究科教授)より、
総合評価方式入札制度について、最初はどう普及していくかということだったが、
それからどう改善していくか、21年度からは入札契約制度を含めて少しでも改善しようとする
継続した取り組みをしてきた。
現在は災害後の取り組みに対してや、社会的なニーズも変化してきている。
27年度の実施状況を踏まえて今後の取り組みについて議論したいという挨拶があった。

続いて、五道仁実氏(国土交通省 大臣官房 技術審議官)より、
26年の品確法の改正で担い手確保等に取り組んでいる。
総合評価は平成10年の品確法制定より始まり現在適用率は99%になっているが、課題も多い。
25年度は二極化、今年度は担い手確保、技術提案交渉方式等に取り組んでいく。
当面の課題としてフロントローディング方式、技術提案S型の改善、災害等非常時の対応がある。
総合評価についてはさらなる改善を図っていくことの挨拶があった。

(1)直轄工事における総合評価落札方式の実施状況
総合評価方式は適用率はほぼ100%。
件数ベースでは技術提案を求めない施工能力評価型(Ⅱ型)が約7割を占める。
金額ベースだと技術提案・施工計画を求める技術提案評価型、施工能力評価型(Ⅰ型)が6割を占め、
施工能力評価型(Ⅱ型)が4割、技術提案評価型(A型)は2件のみ。
ここ2年は件数・金額とも減少している。



(2)建設生産・管理システムにおける当面の主要検討課題(案)
この「総合評価方式の活用・改善等による品質確保に関する懇談会」では
以下の黄色部分を議論していく。
・総合評価落札方式の改善
 技術提案評価型S型の改善
 担い手確保等の政策推進の取組(WLB、女性、若手、技能労働者、i-Constructionの推進等)
 受発注者の負担軽減
 受注企業の固定化(段階選抜等)への対応
・事業特性等に応じた入札契約方式
 フロントローディング実践のための技術提案・交渉方式の適用拡大
 災害等の非常時における発注方式の適切な適用のあり方の整理



これに対して参加された有識者の方より意見が出された。
・課題がたくさんあって驚いている。問題に対して発注者側が対応するのは限界がある。
 それが受注者側にも跳ね返る。
・受注者としては昔は発注者側にものが言えなかった。最近はストレートに問題点をあげることができる
 環境となった。
・今回の議論とは違うが、年度末に工事が集中するのはあり得ない。
 普通は年度の途中で終わるようになる。
・担い手確保は会社としても手が出ない問題。
・女性を活用するのはホワイトカラーとしてなのか、現場の技能者としてなのか。
・地方に総合評価が理解されていない。いかに地方に浸透させるか。事後評価が課題。
 地道に浸透させるべきでは。
・学生が建設業に就職しない理由として、休日が少ないというのがあげられる。
 週休2日にできる工期の設定が必要。
 若手は休みに対して、女性は産休への対応が必要。
・総合評価は技術力と価格で評価するのであれば、若手とか女性は技術力ではないのでは。
 →品質を確保するのは人材が必要
・担い手確保では人の囲い込みが出てきている。労働資源には限りがある。
・週休2日にすることで解決するか。実際には休みのない会社が工事を支えている。

(3)フロントローディング実践のための技術提案・交渉方式の適用拡大
これまでの適用を踏まえ運用ガイドラインを改正していく。
これまでの総合評価にはない価格の交渉もある。

(4)総合評価方式の改善等
<技術提案評価型 S型の改善>
技術提案評価型S型 技術評価点の得点率については年々縮小傾向にある。
これに対して業界の代表の方からは、「建設業者で技術評価点をあげるスキルが上がって、
決まったキーワードを入れるとかで誰でも技術提案書が書けて得点がとれるようになっている。
そのスキルだけは向上している。成果も含めて評価できないか」等の意見も上がった。
技術提案評価型S型については、企業の技術力が適切に評価される評価テーマの設定や
評価にあたっての改善点が論点となる。



<担い手確保等の政策推進の取組の考え方>

平成28年後半からはWLB(ワーク・ライフ・バランス)の評価を推進する企業を入札時に評価する。
女性技術者についてはトイレ等の必要な施設整備費用を計上する。



WLB(ワーク・ライフ・バランス)関連認定制度を評価に活用する。
一般土木A等級党の工事で、認定制度を活用した評価を平成30年度までに全面的に導入する。
認定制度は現状は大手企業のみとなっている。



週休2日制のモデル工事は平成26年の6工事から、平成27年は56工事に拡大した。



女性技術者のモデル工事は平成26年の12件から、平成27年は16件となった。



担い手確保に資する取り組みの方向性としては
ワーク・ワイフ・バランスの推進、若手技術者、女性技術者、登録基幹技能者の配置等を評価する
取り組みを継続・拡大する際の目安について
若手技術者等、将来にわたる担い手の確保等に政策推進の取り組みについて、政策目標の実現
状況に対する寄与度等をフォローアップする手法やその指標
等を検討する。

i-Constructionを推進するために、総合評価方式等においてどのような取り組みが考えられるか。
i-Construction(建設現場の生産性革命)を推進するため、総合評価方式において
技術提案の評価テーマ
として生産性向上に資するテーマ内容や適用する工事内容等について、
受発注者へのヒアリング等を実施し、その具体化を検討する。

<受発注者の負担軽減>
各地方整備局では、「簡易確認型」「一括審査方式」「概略発注方式」等の負担削減策が
試行されている。
今後も受発注者双方の負担の認識や改善点等をヒアリング等を通じて把握して
さらなる取り組みを検討する。

(5)災害等の非常時における発注方式の適切な適用のあり方
課題として
・災害対応を迅速に行うため、簡易で早期に契約締結が可能な手法やその適用にあたっての
工夫等について、さらなる関係機関での共有が求められる。
・短期間で多くの工事の発注を行うことによる手続きミス発生の防止、災害発生により
施工者側の施工体制等が平常時と異なる状況である可能性に留意が必要。

災害等の非常時において適切に入札契約方式が適用されるためのガイドラインの作成について
随意契約、指名競争、一般競争等の入札契約方式を、被害の状況、施工者側の状況等を踏まえつつ、
短期間で適切に選択できるよう、災害時における入札契約方式選定の基本的な考え方や
過去の災害における発注事例を関係図書等とともに整理したガイドラインを整備する。

有識者の方からは以下の意見が出された。
・発注事務が煩雑、チェック内容が多い。
・点数の差がつかなくなってきている。評価報告を工夫してほしい。
 プラスだけでなくマイナス要素も採点する。
・1位同点が多いのは当然なのでは。
・サブコンや現場労働者の意見も必ず聞くようにしてほしい。
・競争参加者が増えることによる発注者の負担増。
・働く方のいきがい。キャリアアップ、キャリアパス制度を広めていく。
・災害協定を積極的に評価する。


     

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